結論: 店舗付き住宅の出口は「貸す・売る・住む(使う)」の3択です。
- 貸す — 店舗部分だけ、または建物全体を賃貸に。定期借家で期間終了後の退去を担保できる
- 売る — 店舗付きのまま、または解体更地にして売る。買い手層は普通の住宅と異なる
- 住む・使う — 自宅として、または自分の事業で使う。空いた部分の維持管理がカギになる
判断のポイントは「5年後に自分で使う可能性があるか」「毎年の維持費を払い続けられるか」「建物の状態は貸せるレベルか」の3つです。
「親が商売をしていた建物を相続したが、自分は東京に住んでいてどうしたらいいかわからない」——そういった相談が増えています。この記事では、1階が店舗・2階以上が住居という複合用途の建物(店舗付き住宅)について、3つの出口戦略を中立な視点で整理します。
店舗付き住宅という資産の特徴
1階が店舗スペース、2階以上が住居というつくりの建物は、香川県内でも商店街周辺や幹線道路沿いを中心に多く見られます。飲食店・小売店・理美容院などを営んでいた建物がそのまま空いているケースが代表的です。
買い手・借り手の層が普通の住宅と異なる
住宅だけを探している買い手・借り手と、店舗付き住宅を探している相手は重なりません。店舗付き住宅には次のような候補者が現れます。
- 店舗として再活用したい事業者 — 飲食店・サービス業の開業・移転先を探している方
- 店舗兼自宅を一体で探している方 — 1階で仕事、2階で居住のスタイルを希望する方
- 賃料収入目的の投資家 — 1階店舗部分の賃貸収益を見込んだ投資用途
このように複数の属性の買い手・借り手が候補になる一方で、「住宅のみ」を探している層からは外れることが多いため、マーケティングの打ち方が普通の住宅と変わります。
放置すると店舗部分から傷みやすい
誰も使っていない店舗スペースは、換気がされず、排水設備も使われないまま放置されがちです。使われない配管・排水トラップは乾燥してにおいが逆流しやすくなり、窓が長期間閉めきられた室内は湿気がこもってカビが発生しやすくなります。2階の居住スペースより先に1階の店舗部分から傷みが進むことは珍しくありません。
維持コストは継続的にかかる
建物を保有している以上、固定資産税・都市計画税・火災保険・修繕費が毎年かかります。空き家・空き店舗の概算年間維持コストについては空き家管理の基本も参考にしてください。
出口①貸す——店舗部分だけ貸す/建物全体を貸す
居住しながら1階だけ貸すことも可能
2階に自分が住み続けながら、1階の店舗部分だけを賃貸に出すことができます。「親が使っていた店舗を貸して収入にしたい」「将来的には自分でも使いたい」という方に向く選択肢です。
店舗用途には定期建物賃貸借(定期借家)が有効
店舗・事業用物件を貸す場合は、定期建物賃貸借契約(借地借家法38条) の利用を検討する価値があります。
定期借家の特徴は「契約期間の満了で契約が終了し、更新がない」点です。「5年後には自分で使いたい」「建物の状態によっては売却に切り替えたい」という場合に、出口の見通しが立てやすくなります。
これに対して普通借家(借地借家法28条) では、貸主からの更新拒絶・解約申入れに「正当事由」が必要で、「他の用途に使いたい」程度では認められないことがほとんどです。
ただし、定期借家として有効に成立させるためには次の2要件が必要です(借地借家法38条):
- 書面による契約(公正証書その他の書面)
- 契約前に「更新がなく、期間満了で終了する」旨を書面で事前説明する
事前説明書面を欠いた場合、定期の定めが無効となり普通借家扱いになります(国土交通省「定期借家制度について」リーフレット参照)。手続きの漏れが後のトラブルにつながるため、契約書面の作成は宅建士にご相談ください。
事業用賃貸の媒介報酬
事業用(非居住用)賃貸の媒介報酬は、昭和45年建設省告示第1552号に基づき、貸主・借主から受け取れる合計が借賃の1ヶ月分+消費税以内と定められています。居住用賃貸と異なり、事業用は合計1ヶ月以内であれば配分が自由です。入居者が決まるまで仲介料は発生しません。
高松市での賃貸需要の条件
高松市では「ことでん沿線・JR高徳線の駅近」「スーパー・医療機関に近い」「駐車場あり」の物件に需要が集中する傾向があります。香川県では駐車場が来店型業種にとってほぼ必須条件です。物件の立地がこれらに当てはまるかどうかで、賃貸の難易度が大きく変わります。
空き店舗を貸す際の具体的な流れと費用については、空き店舗を貸したい方へをあわせてご覧ください。
また、店舗付き住宅の用途変更(例:店舗から別の用途へ)については、延べ床面積200㎡以下であれば用途変更の確認申請が不要になりました(建築基準法改正)。詳細は自宅・店舗の用途変更についてをご確認ください。
テナント募集はテナント募集ページからもご相談いただけます。
出口②売る——店舗付きのまま売る/解体・更地で売る
店舗付きのまま売る
店舗付き住宅を現状のまま売り出す場合、買い手の候補は「事業利用目的の購入者」「投資家」「店舗兼自宅希望者」などです。普通の住宅を探しているファミリー層とは異なる市場にアプローチすることになります。
いずれの買い手にも共通するのは「物件の使い勝手と立地」を重視する点です。道路幅・駐車スペース・設備の状態・周辺の通行量などが査定に影響します。
解体・更地にして売る
老朽化が進んでいる場合や、「住宅として使える状態にない」場合は、解体して更地にして売る選択肢もあります。
高松市では、一定の条件を満たす老朽建物を解体する際に補助が受けられます。
高松市 老朽危険空き家除却支援補助事業(通常枠)
- 補助額:解体工事費の3分の1、上限50万円(令和8年度)
- 対象条件:不良度測定基準で評点合計100点以上の「不良住宅」と判定されること
- 申請先:高松市役所本庁舎9階・住宅政策課(TEL: 087-839-2136)
- 着工は交付決定後が必須(交付決定前に着工すると補助が受けられません)
(出典:高松市・令和8年度確認)
ただし、更地にすると固定資産税の住宅用地特例が外れ、税負担が増加することがあります(地方税法)。解体のタイミングと税負担の変化については古家と更地どちらで売るかも参考にしてください。
判断の推奨順序
まず店舗付きのまま査定を依頼し、売れるか・どのような価格帯になるかを確認してから、解体・更地化を検討することをお勧めします。解体費用を先に支出してしまうと、更地になった後の売り方に選択肢が狭まります。
売却のタイミングについては売却タイミングの考え方もご参考ください。
税務上の注意点
店舗付き住宅は税務上の扱いが住宅のみの建物と異なる場合があります(例:居住部分と店舗部分の按分)。売却前に税理士に確認されることをお勧めします。当所から税理士のご紹介も可能です。
出口③住む・使う(自宅として・自分の事業として)
相続人が自宅として使い続ける
既に2階に住んでいる場合や、引越しを検討している場合など、自宅として継続利用する選択肢もあります。この場合、1階の店舗スペースをどう扱うかが課題になります。
自分の事業や副業に活用する
将来的に自分で事業を始めることを検討している方は、店舗スペースを温存しておくことにも一定の合理性があります。ただし「いつか使うかもしれない」という判断の先送りには、毎年の維持コストがかかり続けるという現実的なコストが伴います。
空き部分の管理が重要
自分が使わない部分(空き店舗スペース)を放置すると、使われないまま傷みが進みます。よしもと空き家相談所の管理サービス(ワンコインプラン月500円から)を活用すれば、定期的な巡回・換気・通水で建物の状態を維持できます。
詳しくは空き家管理サービスをご確認ください。
判断のための3つの質問
どの出口を選ぶか迷ったときは、以下の3つの問いから整理してみてください。
Q1. 「5年後に自分または家族がその場所を使う可能性はありますか?」
- ある → 住む・貸して手元に残す
- ない → 売るという方向で検討
Q2. 「毎年の維持費(固定資産税・修繕費など)を払い続けられますか?」
- 払える → 保有しながらじっくり考える選択肢あり
- 負担が重い → 売る・貸して収益化を急ぐ
Q3. 「建物の状態は人に貸せるレベルですか?(最低限の設備が機能しているか)」
- 貸せる状態 → 賃貸も選択肢に入れられる
- 修繕が必要 → 改修コストを見積もってから判断。状態によっては売却も選択肢
この3問に答えるだけで、「どの方向を優先して検討すればよいか」の輪郭が見えてきます。
県外にお住まいの方へ
「香川に店舗付き住宅があるが、自分は東京・大阪に住んでいる」というオーナーも多くいらっしゃいます。
よしもと空き家相談所では、来県ゼロで初動を進める対応が可能です。
- LINE写真確認 — スマートフォンで撮影した写真をLINEで送っていただくだけで、概況の把握と初期的なアドバイスが可能です
- IT重説(電子化した重要事項説明) — 賃貸・売却いずれもオンライン対応
- 契約書の郵送対応 — 書類のやりとりは郵送で完結
- 内覧立ち会いの代行 — 現地での対応はすべて当所が代行します
来県ゼロで進める具体的な流れは県外からの不動産活用まとめをご覧ください。
まとめ
店舗付き住宅の出口は「貸す・売る・住む(使う)」の3択です。どれが正解かは、建物の状態・立地・ご自身の生活状況・将来の利用見込みによって異なります。
「5年後に使う予定がない」「維持費が負担になっている」場合は、早めに動くほど選択肢が広がります。「まだ迷っている」段階でも、現状確認のご相談は費用がかかりませんので、まず一度相談してみることをお勧めします。
どこから手をつければいいかわからない場合は、査定・現状確認のご相談からお気軽にどうぞ。お問い合わせフォームまたはLINEからご連絡ください。
出典・参考(2026年7月6日確認)





