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売買仲介2026.08.20 (木)

居抜きとスケルトン、店舗を貸すならどっち?貸主が選ぶ基準

居抜きとスケルトン、店舗を貸すならどっちが得か。早く決まる居抜きと用途が自由なスケルトンを貸主視点で比較し、造作買取請求権(借地借家法33条)や原状回復・造作の帰属の決め方を高松の宅建士が解説します。

居抜きとスケルトン、店舗を貸すならどっち?貸主が選ぶ基準

結論: 店舗を貸すときの「居抜きかスケルトンか」は、貸主にとって**「早く決まりやすさ」対「用途の自由度・工事負担」のトレードオフです。前テナントの設備を活かせる業種を想定できるなら居抜きが早く決まりやすく、業種を問わず広く募集したい・貸主が用途をコントロールしたいならスケルトンが有利です。どちらを選ぶにせよ、退去時の造作の扱いには造作買取請求権(借地借家法33条)**が関わるため、原状回復の範囲・造作の帰属・契約形態を貸す前に契約で決めておくことが、後のトラブルを防ぐ最大のポイントになります。

商店街の空き店舗や、親が商売をしていた店舗付き住宅を貸そうとしたとき、「厨房や什器を残したまま貸すべきか、全部撤去して更地のような状態で貸すべきか」で手が止まる方は多くいらっしゃいます。検索して出てくる情報の多くは、これから出店する借主(テナント)向けの「居抜き物件は初期費用が安い」という話ばかりで、貸す側(オーナー)がどう判断すればいいかはなかなか見つかりません。この記事では、高松市を拠点に事業用物件の賃貸仲介に取り組む宅地建物取引士の視点で、貸主のための居抜き・スケルトン比較を整理します。

居抜きとスケルトンの違い(貸主視点で整理)

まず言葉の整理からです。貸主として押さえるべきは「退去時にどの状態で戻ってくるか」「次に貸すときどの状態で渡すか」という視点です。

  • 居抜き(いぬき) — 前のテナントが使っていた内装・厨房設備・什器・造作などを残したまま貸す(引き継ぐ)状態。「造作あり」で貸すイメージです。
  • スケルトン — 内装や設備を撤去し、コンクリート躯体がむき出しに近い素の状態。借主が一から自分の店を作れる状態です。

借主向けの記事では「居抜きは初期費用を抑えられる/スケルトンは自由に作れる」という説明が中心になります。しかし貸主にとっての論点は少し違います。貸主が本当に気にすべきは次の3点です。

  1. 早く借り手が決まるか(空室期間=収入ゼロの期間をどれだけ短くできるか)
  2. その造作は誰のものか(前テナントの造作を引き継いで貸せる権利関係になっているか)
  3. 退去時にどう戻してもらうか(原状回復の範囲をどこまで求めるか)

この3点を軸に、以下で居抜き・スケルトンそれぞれのメリットと注意点を見ていきます。

居抜きで貸すメリットと注意点

メリット:早く決まりやすく、撤去費用を抑えられる

居抜きの最大の利点は、同系統の業種のテナントが決まりやすいことです。飲食店を飲食店に貸すように、前の設備をそのまま使える借り手にとっては初期投資が大きく減るため、内見から成約までのスピードが上がりやすくなります。貸主側も、内装や厨房を撤去する費用を負担せずに募集を始められます。空室が続くほど収入はゼロのまま固定資産税や維持費だけがかかるので、「早く決まりやすい」ことは貸主にとって直接のメリットです。

注意点①:前テナントの造作の権利関係を確認する

ここが貸主として最も見落としやすいポイントです。店舗に残っている設備・造作が、そもそも誰のものかを確認する必要があります。前のテナントが設置した厨房やエアコン、看板などの造作は、契約内容によっては前テナントの所有物のままであることがあります。

前テナントの退去時に「造作を残置していく(貸主に無償で譲渡する)」「造作を有償で次の借主へ引き継ぐ(造作譲渡)」といった取り決めがきちんと整理されていないと、後から前テナントや第三者と所有権をめぐるトラブルになりかねません。居抜きで貸すなら、残っている造作の権利がクリアになっているかを必ず確認してから募集に出すことが大前提です。

注意点②:リース残・保守契約の有無

厨房機器や空調、看板などがリース契約になっている場合、リース残債や引き継ぎの可否が問題になります。前テナントのリース契約が残ったままの設備を「使える」と思って募集すると、実際には引き継げなかったり、リース会社の同意が必要だったりします。設備の保守契約や、給排水・電気容量が次の業種で足りるかも含め、居抜きで残す設備の「実際に使える状態か」を事前に点検しておきます。

注意点③:業種が限定されやすい

居抜きは「その設備を活かせる業種」に候補が絞られる裏返しでもあります。飲食の造作が残っていれば飲食系の候補は増えますが、物販や事務所として使いたい借主にとっては、むしろ撤去費用がかかる不利な物件に見えます。想定するテナント業種が明確なら居抜き、というのが基本の考え方です。

スケルトンで貸すメリットと注意点

メリット:用途の自由度が高く、幅広く募集できる

スケルトンの利点は、業種を問わず幅広い借り手にアピールできることです。飲食・物販・サービス・事務所——借主が自分の思うように内装を作れるため、候補となるテナントの間口が広がります。貸主が「この建物をどんな用途で使ってほしいか」をコントロールしやすいのもスケルトンの特徴です。前テナントの造作の権利関係やリース残といった、居抜き特有のややこしさを持ち込まずに募集できる身軽さもあります。

注意点①:原状回復(スケルトン化)工事の負担と空白期間

前のテナントが居抜き状態のまま退去した物件をスケルトンで貸すには、内装・設備を撤去する原状回復工事が必要になります。この工事は本来、退去するテナント側が契約に基づいて負担するのが原則ですが、契約でどこまでを原状回復の範囲とするかが曖昧だと、撤去費用を貸主がかぶることになりかねません。

さらに、撤去工事をしている間は貸し出せないため、**空白期間(募集できない期間)**が生じます。「早く決めたい」貸主にとっては、この工事期間と費用が居抜きに対するデメリットになります。

注意点②:借主の内装投資が大きい=決断に時間がかかることも

スケルトンは借主にとって初期投資(内装工事費)が大きくなるため、居抜きに比べて出店の意思決定に時間がかかる場合があります。間口は広い一方で、一件一件の成約までの検討が慎重になりやすい、という側面も頭に入れておきます。

造作買取請求権を知っておく(借地借家法33条)

居抜き・スケルトンのどちらを選ぶにしても、貸主が知っておくべき制度が造作買取請求権です。

どんな権利か

借地借家法33条は、「賃貸人(貸主)の同意を得て建物に付加した畳・建具その他の造作」がある場合、建物の賃貸借が期間の満了または解約の申入れによって終了するときに、借主は貸主に対してその造作を時価で買い取るよう請求できると定めています。貸主から買い受けた造作についても同様です。

つまり、貸主が「エアコンや棚を付けていいですよ」と同意して借主が設置した造作について、退去時に借主から「これを時価で買い取ってください」と求められる可能性がある、ということです。貸主の想定外の出費につながりうる権利なので、仕組みを知らずに貸すのは危険です。

特約で排除できる(任意規定)

重要なのは、この造作買取請求権は特約で排除できるという点です。借地借家法37条は「強行規定」として、31条(対抗力)・34条(転借人の保護)・35条(借地上建物の賃借人の保護)に反する借主に不利な特約を無効とすると定めていますが、33条はこの37条の列挙に含まれていません。したがって、契約で「造作買取請求権を行使しない」「退去時は原状回復のうえ明け渡す」といった特約を定めておけば、造作買取請求を排除できます。実務では、こうした特約を契約書に入れておくことが一般的です。

※この点は制度の一般的な解説です。個別の契約内容や権利関係についての法律判断・法律相談は弁護士など専門家の領域であり、当所がそれを行うことはありません。当所は宅地建物取引士として、契約実務の中で「どう取り決めておくべきか」の材料をご案内し、必要に応じて専門家をご紹介します。

契約で決めておくべきこと

居抜き・スケルトンの選択は、結局のところ契約書で何をどう取り決めておくかに集約されます。貸す前に固めておきたいのは次の3点です。

① 原状回復の範囲

「退去時にスケルトンまで戻すのか」「居抜きのまま次のテナントへ引き継ぐことを認めるのか」を明確にします。店舗・事業用の賃貸は、住居用と違って原状回復の範囲を契約の取り決めに委ねる部分が大きいため、ここを曖昧にすると退去時の費用負担でもめます

② 造作の帰属と造作買取請求権の扱い

借主が設置した造作を、退去時に撤去させるのか・残置(譲渡)させるのか・買い取るのかを決めます。前述の造作買取請求権については、特約で行使しない旨を定めておくかどうかもこの段階で判断します。次のテナントへ居抜きで引き継ぐ想定なら、造作譲渡のルールもあらかじめ整理しておきます。

③ 契約形態(定期借家の活用)

「将来は自分で使いたい」「建物の状態次第で売却に切り替えたい」という場合は、**定期建物賃貸借(定期借家)**の活用を検討します。定期借家は期間満了で契約が終了し更新がないため、出口の見通しが立てやすくなります。ただし、書面による契約と、契約前に「更新がなく期間満了で終了する」旨を書面で事前説明することが必要で(借地借家法38条)、これを欠くと普通借家扱いになります。普通借家では、貸主からの更新拒絶・解約申入れに正当事由が必要になります(借地借家法28条)。

これらの契約実務や、貸すまでの流れ・費用の全体像は、空き店舗を貸したい方向けの基本記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。店舗付き住宅で「貸す・売る・住む」から迷っている段階の方は、店舗付き住宅を相続したら——貸す・売る・住むの選び方もご参考ください。

県外にお住まいの方へ

「親が商売をしていた高松の店舗を相続したが、自分は県外に住んでいて、居抜きで貸すべきかスケルトンにすべきか現地で判断できない」——こうしたご相談は少なくありません。

居抜き・スケルトンの判断は、残っている設備の状態・権利関係・立地から想定できるテナント業種を、実際に現地で見て見極める必要があります。よしもと空き家相談所では、現地確認・残置設備の状態チェック・内見立ち会い・鍵の管理・条件交渉まで、現地対応をすべて代行します。オーナー様には、写真での状況共有と必要な判断・書類対応だけをお願いする形で、来県ゼロで賃貸募集を進めていただけます。

遠方から香川の物件を活用する具体的な流れは、県外からの売却・活用まとめにまとめています。

まとめ

  • 貸主にとっての居抜き・スケルトンは「早く決まりやすさ(居抜き)」対「用途の自由度・工事負担(スケルトン)」のトレードオフ
  • 居抜きは同系統業種が決まりやすい一方、前テナントの造作の権利関係・リース残の確認が必須
  • スケルトンは幅広く募集できる一方、原状回復工事の費用と空白期間を貸主が背負うリスクがある
  • 退去時の造作には**造作買取請求権(借地借家法33条)**が関わる。ただし37条の強行規定に含まれず、特約で排除できる任意規定
  • 最後は**原状回復の範囲・造作の帰属・契約形態(定期借家)**を契約で固めておくことがトラブル回避の鍵

「うちの店舗は居抜きとスケルトンどちらで出すべきか」「残っている設備は活かせるのか」——判断は物件ごとに変わります。まずは現状を確認するところから始めましょう。査定や相談を受けること自体に費用はかかりません。お問い合わせフォームまたはLINEでお気軽にご相談ください(お電話は 080-3649-4616)。LINEは「空き店舗の相談。場所は高松市◯◯です」の一言だけでOKです。

賃料の目安を知りたい・テナント付けから相談したいという方は、空き店舗の活用・テナント募集ページもあわせてご覧ください。


出典・参考(2026年7月12日確認)

よくある質問

Q.店舗を貸すなら居抜きとスケルトンのどっちが得ですか?

A.「早く決めたい・前の設備を活かせるテナントを想定できる」なら居抜き、「業種を問わず広く募集したい・貸主が用途をコントロールしたい」ならスケルトンが向きます。居抜きは原状回復や造作の権利関係を、スケルトンは工事負担と空白期間を、それぞれ事前に見極めることが判断の分かれ目です。

Q.造作買取請求権とは何ですか?貸主は必ず買い取らないといけませんか?

A.造作買取請求権は、賃貸人の同意を得て付加した造作を、賃貸借の終了時に借主が時価で買い取るよう請求できる権利です(借地借家法33条)。ただし同法33条は37条の強行規定に含まれず、特約で排除できる任意規定のため、契約で「造作買取請求権を行使しない」旨を定めておくことができます。

Q.店舗の原状回復は貸主と借主のどちらが負担しますか?

A.店舗・事業用は住居用と異なり、原状回復の範囲を契約の取り決めに委ねる部分が大きくなります。スケルトン返しにするか、居抜きのまま次へ引き継ぐかも含め、退去時にどこまで戻すかを契約書に明記しておくことが、後の負担とトラブルを防ぐ鍵になります。


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吉本光輝
吉本 光輝
KC合同会社 代表 / 宅地建物取引士 / 空き家管理士1級

香川県高松市を中心に、空き家の売却・管理をお手伝いしています。空き家再生事業にも取り組んでおり、建物の状態を見る目と売主様の立場に立った提案が強みです。

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