結論: 多くの戸建て住宅(延べ床面積200㎡以下)を店舗・飲食店として貸す場合、確認申請なしで用途変更できます。2019年6月施行の建築基準法改正で、確認申請が必要な規模が「100㎡超」から「200㎡超」に引き上げられたためです。ただし確認申請が不要でも建築基準法・消防法などへの適合義務は残り、飲食店なら保健所の営業許可も別途必要です。「自分の物件はどのケースか」を確かめる手順と、相談先の役割分担をオーナー目線で整理しました。
「相続した実家の1階をカフェに貸したい」「店舗付き住宅をネイルサロンに使ってもらいたい」——そんな相談が増えています。建築の専門サイトには詳しい情報があっても、事業者向けの難解な解説が多く、オーナーが「自分の物件はどのケースにあたるのか」を判断しにくいのが現状です。この記事では、高松市で事業用物件の賃貸仲介に取り組む宅地建物取引士の視点で、用途変更の基本から手続きの流れ、相談すべき専門家までを整理します。
住宅を店舗として貸すのは「用途変更」にあたる
建築基準法では、建物を「住宅」「店舗」「飲食店」「事務所」「倉庫」などの用途ごとに分類しています。
実家の1階をカフェに貸すケースや、空き店舗付き住宅をサロンに使ってもらうケースでは、建物の用途区分が「住宅(居宅)」から「店舗・飲食店等」(建築基準法が「特殊建築物」と定める種別)に変わります。これを用途変更といいます。
建築基準法は、用途変更を行う場合に一定規模以上であれば確認申請という行政手続きを求めています。確認申請とは、建物が建築基準法などの基準に適合しているかを建築確認検査機関に確認してもらう手続きです。「何㎡から必要か」の閾値が、2019年6月の法改正で変わりました。
200㎡ルール——確認申請が必要かどうかの分かれ目
2019年6月の改正前後
建築基準法(法6条1項1号)の改正(平成30年改正)により、2019年(令和元年)6月25日から用途変更に伴う確認申請が必要になる規模が引き上げられました。
| 改正前 | 改正後(現行) | |
|---|---|---|
| 確認申請が必要な規模 | 変更後の用途部分が100㎡超 | 変更後の用途部分が200㎡超 |
(出典: 東京都都市整備局「建築基準法等の改正について(用途変更関連)」・2026-07-06確認)
改正前は「店舗部分が100㎡を超えたら申請が必要」でしたが、改正後は「200㎡を超えるまで申請不要」になりました。
多くの戸建て住宅は200㎡以下
一般的な戸建て住宅の多くは延べ床面積が200㎡を下回ります。この改正により、実家全体を店舗に転用するケースも含め、多くの住宅では確認申請なしで用途変更できるようになりました。
これはオーナーにとってプラスのニュースです。確認申請が不要になれば、手続きの時間とコストを抑えてテナント募集を進めやすくなります。
ただし「確認申請が不要」と「何もしなくてよい」は別の話です。次章で確認申請が不要でも守るべきことを整理します。
確認申請が不要でも守るべきこと
確認申請が不要でも、建物は建築基準法や関連法令の基準を満たしていなければなりません。確認申請はあくまで「基準を満たしているか確認する手続き」であって、基準そのものはなくなりません。
建築基準法上の用途に応じた基準
住宅と店舗・飲食店では、採光・換気・廊下幅・天井高など建物に求められる基準が異なります。変更後の用途が要求する水準を満たしているか確認が必要です。内装の変更を伴う場合は、防火材料の使用義務(内装制限)も生じることがあります。
こうした適合確認や設計変更は建築士の業務です。「自分の物件が現状で基準を満たすか」は、建築士に相談するのが確実です。
消防署への届出
店舗・飲食店として使用を開始する場合、消防署への防火対象物の使用開始届が必要になるのが一般的です。消火器や自動火災報知設備の設置が求められるかどうかも、建物の規模・構造・用途によって変わります。届出の前に最寄りの消防署に確認しておくことをおすすめします。
飲食店を入れる場合の保健所許可
テナントが飲食店を営む場合、飲食店営業許可(食品衛生法に基づく許可)はテナント(借主)が保健所に申請します。ただし、シンクの数・厨房の構造・手洗い設備の設置など物件側の設備が許可基準を満たしていないと営業許可が下りないため、貸主として事前に設備を確認しておくことが大切です。「あとで設備が足りないことが判明した」というトラブルを防ぐためにも、テナントが業種を決める段階で保健所に問い合わせておくのが得策です。
ケース別の考え方
自分の物件がどのケースにあたるかを整理します。
① 戸建て住宅の一部を店舗に貸す
住宅として使われていた建物の一部(1階など)を店舗用途に転用するケースです。転用する部分の床面積が200㎡以下であれば、確認申請は不要です。残りの住宅部分との用途の混在が生じるため、防火区画などの観点から建築士に確認しておくと安心です。
② 戸建て全体を店舗として貸す
建物全体を住宅から店舗に転用するケースです。延べ床面積が200㎡以下であれば確認申請は不要ですが、建物全体が店舗の基準を満たす必要があります。内装工事を伴うことが多いため、建築士への相談を早めに行うことをおすすめします。
③ 店舗付き住宅の1階(もとから店舗の部分)を貸す
もともと1階が店舗用途として建てられた「店舗付き住宅」の場合、1階店舗部分の用途変更は生じません。建物の用途区分はすでに「店舗」のため、テナントが入れ替わっても新たな確認申請は不要です。ただし内装工事・設備変更を伴う場合は消防設備の確認等が引き続き必要になることがあります。
建築士に相談すべきサイン
次のいずれかに当てはまる場合は、早めに建築士に相談することをおすすめします。
- 変更後の床面積が200㎡に近い(または超える可能性がある)
- 間仕切りの撤去・設備の大規模改修を伴う工事を検討している
- 既存建物の増改築歴が複雑で、確認済証・検査済証の有無が不明
- テナント候補から「設備面で許可が取れるか確認してほしい」と言われた
手続きの相談先と当所のサポート範囲
用途変更に関わる手続きは複数の専門家にまたがります。混乱を防ぐため、役割分担を整理しておきます。
| 手続き | 担当 |
|---|---|
| 確認申請の要否判断・申請代行・建物設計 | 建築士(建築士法上の独占業務) |
| 消防署への届出・消防設備の確認 | 消防署(管轄の消防署に問い合わせ) |
| 飲食店営業許可の申請 | 保健所(テナントが申請) |
| 賃貸借契約の媒介・賃料査定・テナント募集 | 宅地建物取引士(当所) |
よしもと空き家相談所のサポート範囲は次のとおりです。
- 「確認申請が必要かどうか」の大まかな当たり付けと、建築士・専門家への橋渡し
- 住宅→店舗転用後のテナント募集・賃料査定・賃貸借契約の媒介(宅地建物取引士の業務)
- 県外オーナー向けの現地対応代行(内見立ち会い・鍵の管理・条件交渉)
確認申請の申請代行や建物の設計変更は建築士の業務のため、当所では行っておりません。ただし「何から手をつければよいか」の入口のご相談はいつでも歓迎しています。
貸し出しの流れや費用・契約形態の詳細は、姉妹記事の空き店舗を貸したい人が最初に読む記事をあわせてご覧ください。店舗貸しの5ステップと媒介報酬の仕組みを解説しています。テナント募集サービスの全体像は空き店舗活用のご案内にまとめています。
物件の活用方法(売却・賃貸・管理保有の比較)は空き家の活用方法を比較もあわせてどうぞ。
県外にお住まいの方へ
東京・大阪など県外にお住まいで、香川の実家や店舗付き住宅の活用を検討されている方へ。
当所では、建築士への相談手配から、テナント募集・内見立ち会い・契約対応まで、現地での手続きはすべて代行しています。書類への署名・捺印など最低限の判断をしていただくだけで、来県ゼロで賃貸仲介を進めることができます。
県外から香川の物件を活用する方法の全体像は県外からの売却・活用まとめにまとめています。
まとめ
- 住宅を店舗に用途変更する際の確認申請は、変更後の用途部分が200㎡超の場合に必要(2019年6月25日施行の建築基準法改正)
- 一般的な戸建て住宅の多くは200㎡以下のため、確認申請なしで用途変更できるようになった
- 確認申請が不要でも建築基準法・消防法への適合義務は残り、飲食店なら保健所への営業許可申請も必要
- もとから店舗用途だった「店舗付き住宅の1階」を貸す場合は用途変更にあたらない
- 確認申請の代行・建物設計は建築士の独占業務。当所は「当たり付け・専門家紹介・賃貸仲介」を担当
「うちの物件、店舗に貸せるかな?」と思ったら、まずはお気軽にご相談ください。確認申請が必要かどうかの大まかな判断から、テナント募集まで一緒に考えます。お問い合わせまたはLINEでご連絡ください。
出典・参考(2026年7月6日確認)





