結論: 相続または遺贈で取得した土地を、一定の要件のもとで国に引き取ってもらえる「相続土地国庫帰属制度」が2023年(令和5年)4月27日に始まりました。費用は審査手数料が土地一筆につき14,000円+承認された場合の負担金が基本20万円(土地の種目・区域によって増額)。ただし建物がある土地は申請不可(解体が必要)で、境界が不明確な土地や担保権がついた土地なども受け付けてもらえません。引き取りのハードルは想像より高く、建物付きの実家を国庫帰属させようとすると解体費も合わせて100万円超の出費になるケースもあります。手放したい土地があるなら、まず「売れるかどうか」を無料査定で確かめてからでも遅くありません。
法務省の統計(2026年5月31日時点・速報値)によると、制度開始からの申請件数は5,545件、帰属が認められた件数は2,762件。一方で却下81件・不承認85件・取下げ1,023件と、申請しても思うとおりにいかないケースが相当数あります。「書類を出せば引き取ってもらえる」という制度ではないことを念頭に、使える条件と費用を正しく把握してください。
相続土地国庫帰属制度のしくみ
制度の概要と対象者
相続土地国庫帰属制度は、少子高齢化の進行で所有者不明土地が増加する問題に対処するため、「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」として創設されました。
申請できるのは次の方です。
- 相続または相続人への遺贈により土地の所有権を取得した方
- 土地を共有している場合は共有者全員が共同で申請する必要があります
- 制度施行(2023年4月27日)以前に相続した土地も申請できます
一方、「売買で購入した土地」「生前贈与で受け取った土地」は原則対象外です。土地の取得原因が相続または遺贈であることが必須条件です。
申請先——香川県の土地は高松法務局本局へ
申請先は土地が所在する都道府県の法務局・地方法務局(本局)の不動産登記部門です。支局・出張所では受け付けていません。
香川県内の土地については、高松法務局本局(〒760-8508 高松市丸の内1番1号 高松法務合同庁舎、TEL: 087-821-6191)が申請窓口です。申請書類や現地調査なども同局が担当します。なお申請手続きの代行は司法書士・弁護士などの専門家に依頼することが一般的です。
かかる費用——審査手数料と負担金
①審査手数料(土地一筆につき14,000円)
申請時に、土地一筆あたり収入印紙14,000円を納付します。複数筆を申請する場合は筆数分かかります。審査の結果が却下・不承認でも、申請を取り下げた場合でも、手数料は返還されません。
②負担金(基本20万円、種目・区域によって増額)
承認を受けた場合、通知が届いた翌日から30日以内に負担金を納付します(期限内に納付しないと承認が失効)。金額は土地の種目と区域によって次の区分で決まります。
| 種目・区域 | 負担金 |
|---|---|
| 宅地(市街化区域・用途地域の指定なし) | 一律 20万円 |
| 宅地(市街化区域内・用途地域指定あり) | 面積に応じて算定(20万円以上) |
| 農地・田・畑(一般的なもの) | 一律 20万円 |
| 農地(市街化区域内・農振農用地・土地改良施行区域内) | 面積に応じて算定(20万円以上) |
| 森林(区域問わず) | 面積に応じて算定(20万円以上) |
隣接する同種の土地が複数筆ある場合は「合算申出」をすると1筆とみなして負担金を計算できます。詳細な計算は法務省の自動計算シートで確認するか、法務局に問い合わせてください。
建物がある実家の場合——解体費が別途かかる
建物(空き家・倉庫を含む)がある土地は申請を受け付けてもらえません。 実家の建物が残っているまま国庫帰属を目指す場合は、事前に解体して更地にする必要があります。
木造住宅の解体費の目安は3〜5万円/坪(30坪で約100〜150万円)。立地が狭い道沿いや残置物が多い場合はさらに増えます。高松市には老朽危険空き家を対象とした除却補助事業があり、工事費の1/3(上限50万円)、住民税非課税世帯は**4/5(上限120万円)**の補助が受けられる場合があります(詳しくは高松市の空き家解体補助金)。
解体費+審査手数料+負担金を合算すると、建物付きの場合は130〜230万円以上かかることも。この出費を確定させる前に、まず売れる可能性を確かめることが得策です。
引き取ってもらえない土地——意外と多い却下・不承認の要件
国庫帰属制度には「却下事由(申請を受け付けてもらえない)」と「不承認事由(審査を通過できない)」の2段階のフィルターがあります。どちらに当たっても手数料14,000円は戻りません。
却下事由(申請できない土地)
以下の条件に一つでも該当すると、書類を提出しても却下されます。
- 建物が存在する土地——空き家・古家・倉庫があれば対象外
- 担保権・使用収益権が設定されている土地——抵当権・地上権・地役権(承役地)・入会権など
- 通路など他人の利用が予定されている土地——現に通路として使われている土地(却下件数で多数を占める)
- 土壌汚染がある土地——農薬・廃棄物・油汚染など
- 境界が明らかでない土地・所有権に争いがある土地——境界杭が不明、隣地とトラブルがある
不承認事由(審査で引き取れないと判断される土地)
書類審査・現地調査を経て、以下に当たると判断されると不承認になります。
- 急傾斜の崖がある土地——勾配30度以上かつ高さ5m以上の崖で管理に費用がかかる
- 管理を阻害する地上物がある土地——廃棄された工作物・不法投棄された車両・樹木など
- 除去が必要な地下埋設物がある土地——浄化槽・配管・土台の残骸など
- 隣接地との争訟が必要な土地——権利整理なしに国が管理できない状態
- 通常の管理・処分に過分な費用・労力がかかる土地——上記以外も広く対象
法務省の統計(2026年5月31日時点・速報値)では不承認85件のうち「管理を阻害する有体物」が35件と最多で、次いで「国による追加整備が必要な森林」が32件。却下81件では「現に通路の用に供されている」「境界が明らかでない」が上位を占めています。
田舎の土地だからこそ境界が曖昧なケース、農家の親が農機具や廃材を置いていたケースなど、香川の実家周りでも当てはまりやすい要件です。申請前に現地状況を確認しておくことをおすすめします。
なお、国庫帰属を申請するには土地の所有権名義がご自身に移っていることが前提です。2024年4月から義務化された相続登記(3年以内・怠ると10万円以下の過料)を済ませていない場合は先に登記を行う必要があります(相続登記の義務化はいつまで?)。
国に返す前に「売れるか」を確かめるべき理由
国庫帰属申請は費用が先に確定するのに対し、仲介での売却は売れれば手元にお金が残り、売れなければ費用はほとんど発生しません。まず無料査定で可能性を確かめてから判断するのが合理的です。
費用の比較
| 手放し方 | 主な費用 | 特徴 |
|---|---|---|
| 国庫帰属制度 | 審査手数料14,000円(申請時点で確定) + 負担金20万円〜 + 建物があれば解体費100万円〜 + 専門家への依頼費用(任意) | 結果に関わらず手数料は戻らない |
| 仲介売却 | 査定・相談は無料 / 仲介手数料は売却が成立したときだけ | 売れなければ費用は原則かからない |
仲介手数料は売却価格の3%+6万円程度(税込3.3%+6.6万円相当)が上限の目安ですが、これはあくまで成約した場合の話。売れなければ請求されません。
「田舎の土地だから売れない」とは限らない
香川・高松エリアでは、一見「需要がなさそう」に見える土地でも売却できることがあります。
- 隣地所有者への売却——自分の土地を広げたい地主が購入するケース
- 家庭菜園・体験農業目的——週末農業をしたい層からの需要
- 資材置き場・作業スペース目的——地元業者が保管場所として活用するケース
- 古家付きのまま——自分でリフォームしたい買主や投資家が購入するケース(古家付きと更地、どちらで売るか?も参照)
もちろん必ず売れるとは言い切れません。立地・面積・接道状況によっては難しいケースもあります。ただ、査定を受けること自体は相続財産の「処分」にはあたらないため、国庫帰属の申請前に費用ゼロで可能性を確認できます。
相続放棄とあわせて検討している方は相続放棄しても空き家の管理義務は残る?も参考にしてください。土地だけでなく建物・預貯金などすべての財産を失う放棄とは異なり、「相続して国庫帰属申請」「相続して売却」という選択は財産の一部を活用できる可能性があります。相続した空き家の売却全体の流れは相続した空き家を売却するには?で解説しています。
まとめ——費用・条件・判断の順番
| 状況 | 優先すること |
|---|---|
| 建物(空き家・古家)が残っている | まず「古家付き売却」が可能かを無料査定で確認。解体→国庫帰属の順は費用が大きくなりやすい |
| 境界が不明確 | 測量費用と売却の可能性を比べてから国庫帰属を検討する |
| 更地の農地・山林 | 国庫帰属の負担金(最低20万円)と売却価格・仲介手数料を比べる |
| 担保権・入会権がある | まず権利の整理が必要。専門家(司法書士・弁護士)に相談 |
| 相続登記が未了 | 国庫帰属の申請前に登記を済ませる必要がある |
費用の大小より「順番」が重要です。 解体や登記を進める前に、まず「売れる可能性」と「国庫帰属の要件を満たすか」を同時に確認することで、無駄な出費を防げます。
県外にお住まいの方へ
東京・大阪など県外にお住まいで、香川の土地を相続した(する予定の)方へ、2点確認してください。
- 相続登記の義務化(2024年4月〜)により、相続した土地を3年以内に登記しないと10万円以下の過料の対象になります。「放置している」状態は登記義務違反にもなりうるため、まず登記状況を確認しましょう。
- 国庫帰属の前に査定を——費用を確定させる前に、売れる可能性を把握しておくことをおすすめします。査定を受けること自体は相続財産の「処分」にはあたりません。
「帰省せずに香川の土地を手放したい」という方には、LINEでの写真やり取りによる概算査定から、IT重説・契約書郵送まで、来県ゼロで売却を完結する仕組みを整えています。
よしもと空き家相談所では、「この土地、国庫帰属できそうですか?売れますか?」という段階からご相談を承っています。LINEに写真と地番(または所在地)をお送りいただくだけで、概算をお伝えします。申請費用を確定させる前に、ぜひ一度確かめてみてください。
お問い合わせはこちらからどうぞ。LINEで「国庫帰属を検討している土地があります」とひとこと送っていただければ、宅建士・空き家管理士1級の代表が返答します。
出典・参考(2026年7月2日確認)




