結論: 未登記の増築があっても、実家の売却は可能です。
- ただし登記の床面積と現況が食い違うと、買主の住宅ローン審査に影響することがある
- 基本線は、増築部分を反映する表題部の変更登記をしてから売り出すこと
- この登記は土地家屋調査士の業務。当所では提携する調査士をご紹介し、査定時に登記と現況を確認します
お盆に帰省して気づいた「登記されていない増築」への向き合い方を解説します。
「昔の増築が登記されていなかった」と気づいたら
「お盆に久しぶりに実家へ帰ったら、両親が昔つくった離れやサンルームがある。ふと登記の書類を見たら、その部分がどこにも載っていない」——こうしたご相談を、帰省シーズンの高松でよくいただきます。
親が元気なうちは気に留めなかった増築部分も、いざ相続や売却を考える段になると「これは登記されているのか」「売るときに問題にならないか」と急に不安になるものです。
お盆の帰省は、実家の状態を県外から確認できる数少ない機会です。増築の有無に限らず、屋根や外壁も含めて一度点検しておくと安心です。帰省時のチェックの進め方は帰省したら実家をチェック——お盆に見るべき10項目と家族会議にまとめています。
そもそも「未登記の増築」とは・なぜ起きるのか
建物の登記は、大きく2つに分かれます。
- 表題部(表示に関する登記):どこに・どんな構造で・何㎡の建物があるかを記録する部分
- 権利部(権利に関する登記):誰が所有しているか(所有権)などを記録する部分
増築で建物の床面積が変わったときは、本来この表題部を更新する必要があります。ところが、昔の増築ではこの手続きが行われず、登記上の建物が当時のままになっているケースが少なくありません。
未登記のまま残りやすい理由は、主に次のようなものです。
- 住宅ローンを使わずに増築した:金融機関が担保のために登記を求めなかった
- 自分で(または大工さんに直接頼んで)建てた:手続きを案内する人がいなかった
- 「固定資産税は払っているから登記も済んでいる」と思い込んでいた:課税と登記は別の仕組み
とくに最後の勘違いは多く見られます。固定資産税は市町村の家屋調査に基づいて課税されるため、税金を払っている=登記されている、とは限りません。
なお不動産登記法では、建物の床面積などに変更があった日から1月以内に表題部の変更登記を申請する義務が定められており、怠った場合は10万円以下の過料の対象となります(不動産登記法第51条・第164条)。「違法だから慌てて」というより、売却を機に整えておく、という捉え方で十分です。
未登記増築があると、何が問題になるのか
売れないわけではありませんが、次の3点で影響が出ます。
1. 買主の住宅ローン審査に影響することがある
最も実務的な問題がこれです。買主が住宅ローンを使う場合、金融機関は担保となる建物に抵当権を設定します。登記されていない増築部分には抵当権を設定できないため、金融機関によっては「増築部分を登記してからでないと融資できない」と条件を付けることがあります。
買主候補が現金購入とは限らない以上、売り出す前に登記を整えておくほうが、買主の幅が広がり、売却がスムーズになります。
2. 売買契約での説明義務
不動産の売買では、売主(および仲介する不動産会社)が物件の状態を買主に正しく伝える必要があります。登記と現況が異なることは、買主の判断に関わる重要な情報です。未登記であることを隠して売ると、後日のトラブルにつながりかねません。「事実を整理して、正しく伝える」ことが前提になります。
3. 固定資産税との関係
前述のとおり、増築部分が未登記でも、市町村の家屋調査によって固定資産税が課税されていることがあります。この場合、手元の課税明細に載っている床面積と登記面積が食い違うため、これが未登記増築に気づくきっかけになります(調べ方は次章)。税額そのものの個別判断は税理士・市の担当課の領域です。
自分で調べる方法:登記と現況・課税明細を突き合わせる
大がかりな調査は不要です。次の2つを見比べるだけで、当たりをつけられます。
(1) 登記事項証明書を取って、床面積を確認する
法務局で建物の登記事項証明書を取得します。手数料は令和7年4月1日改定で、書面請求(窓口・郵送)1通600円、オンライン請求で郵送受取520円、オンライン請求で窓口受取490円です(法務省「登記手数料について」)。証明書の表題部に記載された「床面積」が、現在の建物の実際の広さと合っているかを見ます。
(2) 固定資産税の課税明細書と照らし合わせる
毎年春に届く**固定資産税の納税通知書(課税明細書)**には、家屋の床面積が記載されています。この床面積が登記事項証明書の床面積より大きい場合、増築分が課税されているのに登記に反映されていない——つまり未登記増築の可能性が高い、と読めます。
離れなど独立した建物を建てた場合は、面積の差ではなく「登記そのものが存在しない」形で表れることもあります。判断に迷うときは、査定とあわせて当所にご相談ください。
対処の選択肢
大きく2つの方向があります。
a. 表題部の変更登記をしてから売る(基本線)
増築部分を登記に反映させる手続きが、**表題部の変更登記(建物表題変更登記)**です。これにより登記と現況が一致し、買主が住宅ローンを使える状態になります。
この登記に必要な建物の調査・測量・図面作成と申請の代理は、土地家屋調査士の独占業務です。当所(不動産会社)が代行することはできません。よしもと空き家相談所では、提携する土地家屋調査士をご紹介し、売却スケジュールと合わせて段取りします。費用は建物の規模・形状や資料の有無で変わるため、一律の金額はここでは示しません。まずは調査士に見積もりを取る形になります。
増築部分の所有権を新たに登記するなど、権利に関する登記が必要な場面では司法書士が担当します。いずれも当所は「専門家への橋渡し」までを担い、登記そのものを請け負うことはありません。
b. 現況のまま、告知したうえで売る
買主が現金で購入する場合や、古家付き土地として建物価値をあまり見込まない取引などでは、未登記であることを買主に正しく伝えたうえで、現況のまま売るという進め方もあり得ます。この場合、登記を整える負担を売主・買主のどちらが負うかを、条件交渉のなかで決めていきます。
どちらが適しているかは、建物の状態・買主層・売り急ぎの有無によります。「登記してから売る」か「現況で売る」かは、査定額の見通しとあわせて判断するのが現実的です。査定で何を見るかは空き家の査定で見られるポイントをご覧ください。
香川・高松での当所の進め方
よしもと空き家相談所では、実家の売却相談をいただいた際、査定の段階で登記事項証明書と現況を突き合わせ、未登記の増築や面積のズレがないかを確認します。そのうえで、
- 表題部の変更登記が必要そうなら、提携の土地家屋調査士を早めにご紹介
- 権利の整理(相続登記など)が絡む場合は、司法書士と連携
- 「登記してから売る/現況で売る」の判断材料(想定価格・買主層・費用感)を整理
という順でお手伝いします。売却にかかる費用の全体像は空き家売却にかかる費用の内訳もあわせてご確認ください。兄弟で共有名義になっている実家の場合は共有名義の不動産を売却するにはも参考になります。
県外にお住まいの方へ
「実家は香川、自分は県外」という方でも、手続きは進められます。登記事項証明書はオンラインでも請求できますし、土地家屋調査士による現地調査は当所が窓口となって段取りします。書類のやり取りは郵送で完結し、売買契約もIT重説(オンライン重要事項説明)と契約書の郵送を組み合わせれば、一度も香川に来ずに売却を終えることも可能です。
来県ゼロで進める売却の流れは香川の実家を現地に行かず売却する流れで詳しく解説しています。
未登記の増築は、「気づいたときに整えておけば怖くないもの」です。売れないわけではなく、買主が安心して住宅ローンを組める状態にしてから売り出すのが基本、と覚えておいてください。
「うちの増築、登記されているのかな?」という段階でも構いません。登記事項証明書をお持ちいただければ、査定とあわせて現況との突合を無料で確認します。お問い合わせページまたはLINEからお気軽にご相談ください。
※本記事は一般的な情報をまとめたものです。表題部の変更登記は土地家屋調査士、権利に関する登記は司法書士、税務の個別判断は税理士の領域です。個別のケースは各専門家にご相談ください。





