家で人が亡くなった場合、売却時に伝える必要があるかは、亡くなった事情や特殊清掃の有無などで変わります。まず、分かっている事実を不動産会社に伝えてください。
国土交通省のガイドラインでは、自然死などは原則として告知不要とされていますが、例外もあります。また、売買には「何年経てば告げなくてよい」という一律の期限はありません。
「事故物件」とは?——国のガイドラインでの整理(自然死は原則告知不要)
そもそも「事故物件」という言葉に、法律上の定義はありません。世間では「人が亡くなった家」をひとくくりに事故物件と呼びがちですが、不動産取引で問題になるのは、その死が「買主の判断に重要な影響を及ぼす事案(心理的瑕疵)」に当たるかどうかです。
この判断のよりどころになるのが、国土交通省が令和3年(2021年)10月に策定した**「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」**です。宅建業者が告知義務についてどう対応すべきかの一般的な基準を、過去の裁判例を踏まえて整理したものです。
ガイドラインでは、原則として告げなくてよい死を明確にしています。
- 自然死 — 老衰や持病による病死など。ガイドラインは、自宅での死因のうち老衰・病死が約9割を占める一般的なものだと指摘しています(人口動態統計・令和元年に基づく)
- 日常生活の中での不慮の死 — 自宅の階段からの転落、入浴中の溺死や転倒事故、食事中の誤嚥(ごえん)など
これらは「居住用不動産で当然に起こりうること」であり、買主の判断に重要な影響を及ぼす可能性は低いとして、賃貸・売買のどちらでも原則告知不要とされています。つまり、「おじいちゃんが自宅で病気で亡くなった実家」は、多くの場合そもそも告知が必要な事故物件ではない、ということです。
ただし例外があります。自然死であっても、亡くなった後に長期間人知れず放置され、いわゆる特殊清掃(消臭・消毒などの原状回復)や大規模リフォームが行われた場合は、告知の対象になり得ます。この場合は次章の告知ルールに従います。
売買の告知義務はいつまで?(賃貸の「概ね3年」との違い・売買は期間の定めなし)
ここが、多くの方が誤解している最重要ポイントです。ネットでは「事故物件も3年経てば告知しなくていい」という情報が広まっていますが、これは賃貸の話であって、売買には当てはまりません。
ガイドラインを正確に読むと、こう書かれています。
- 賃貸取引 — 他殺・自死など自然死以外の死、または特殊清掃等が行われた死については、その死が発覚してからおおむね3年を経過した後は、原則として借主に告げなくてよい(ただし事件性・周知性・社会的影響が特に高い事案は除く)
- 売買取引 — この「おおむね3年」というルールは賃貸取引についてのもの。売買には、時間の経過によって告知しなくてよくなる期間の定めがありません
なぜ売買だけ扱いが違うのか。賃貸は一定期間住んで退去する契約ですが、売買は所有権が永続的に移り、金額も大きく、買主が住み替える人生の一大事だからです。そのため、売買では「把握している事案は、原則として告げる」のが基本になります。
さらに、賃貸・売買のどちらにも共通する重要なルールがあります。買主・借主から事案の有無を問われた場合は、経過期間や死因に関わらず告げる必要があるという点です。「聞かれたのに黙っていた」は最もトラブルになりやすいパターンです。
一方で、隣の家や、日常生活で通常使用しない共用部分で起きた死は、取引対象そのものではないため、原則として告知不要とされています(事件性等が特に高い事案は除く)。
なお、ガイドラインは宅建業法上の告知義務の解釈の指針であり、これに沿わなかったからといって直ちに違法になるわけではありませんが、トラブルになった際は行政の監督や実務判断で参照される基準です。また、ガイドライン通りに対応しても民事上の責任を必ず回避できるわけではなく、個別の紛争は契約内容などにより判断されます。法的な最終判断が必要な場面は弁護士にご相談ください(よしもと空き家相談所は法律相談をお受けする立場ではなく、必要に応じて専門家への橋渡しを行います)。
告知せずに売った場合のトラブル
告知が必要な事実は、買主に伝えてから契約します。価格への影響を気にして伏せると、契約後のトラブルにつながります。
告げるべき事案を告げずに売却すると、後で買主に知られた場合、契約不適合責任(旧・瑕疵担保責任)を問われて損害賠償や契約解除、代金の減額を求められるリスクがあります。裁判に発展すれば時間も費用もかかり、精神的な負担も大きくなります(どのような場合に責任が生じるかの法的判断は、個別に弁護士へご確認ください)。
告知する内容を確認したうえで、価格や引き渡し条件を調整します。事情を理解した買主と契約できるよう、説明した内容は書面に残しておきます。
告知が必要な場合でも、伝えるべきなのは事案の発生時期(特殊清掃なら発覚時期)・場所・死因・特殊清掃の有無といった事実で足り、亡くなった方の氏名や年齢、家族構成、具体的な死の様子までを言う必要はない、とガイドラインは定めています。故人やご遺族の名誉・生活の平穏に配慮した告知ができるということです。
事故物件を売る3つの方法(仲介中心の中立解説)
告知事項のある家でも、売り方にはいくつかの選択肢があります。仲介専門の立場から、整理します。
①そのまま仲介で売る(正しく告知して価格・条件を調整)
まず検討したいのがこれです。立地が良ければ、リフォーム前提で住みたい買主や、投資用に検討する買主は実際にいます。きちんと告知したうえで、相場より少し価格を調整すれば、市場で買主がつくケースは珍しくありません。 何を見て査定するのかは査定のポイントで、売り出し時期の考え方は売却タイミングの考え方で解説しています。
②リフォーム・解体してから売る
傷みが激しい場合や建物の印象を変えたい場合は、リフォームや解体という選択肢もあります。木造の解体費用は1坪あたり3〜5万円が目安(30坪で約100〜150万円)。更地にすると土地として売りやすくなる一方、建物を壊すと固定資産税の住宅用地特例が外れて税負担が上がる点には注意が必要です。高松市には老朽危険空き家の解体を後押しする補助金があります。高松市の空き家解体補助金まとめをご覧ください。
③価格で調整して売る
解体もリフォームもせず、現況のまま「事情を織り込んだ価格」で売り出す方法です。手間と費用をかけずに売れる可能性がありますが、価格設定の見極めが肝心です。買取と仲介でどう値段が変わるかは空き家の買取と仲介はどちらが得?にまとめています。
「訳あり物件買取」業者に相談する前に
検索上位に並ぶ「訳あり物件、高価買取」「事故物件でも即現金化」といった広告を見ると、「事故物件は買取業者しか相手にしてくれない」と感じてしまうかもしれません。ここが、いちばんお伝えしたいところです。
買取は、業者が物件を直接買い取って再販・活用で利益を出すビジネスです。だから、買取価格はおおむね市場相場の6〜8割が目安になります。そして事故物件を専門にうたう買取は、そこからさらに安くなることが多いのが実情です。「訳あり物件だから買取しかない」と最初から買取業者だけに相談すると、提示額が高いのか安いのか比べる基準がないまま話が進んでしまいます。これが、いちばんもったいないパターンです。
- 買取は早くて確実だが、価格は市場相場の6〜8割が目安。事故物件専門買取はさらに下がることが多い
- 仲介は3〜6ヶ月が目安の時間はかかるが、正しく告知したうえで市場価格に近い値で売れる可能性がある
- 損しない順番は「まず仲介の査定で相場を知り、それから買取価格と比べる」
「無料で引き取ります」という業者に手放す前に知っておきたいことは「空き家を無料で引き取ります」の仕組みでも解説しています。あわせてご覧ください。
当所は仲介専門です。告知事項を確認したうえで、募集価格と引き渡し条件をご提案します。
県外にお住まいの方へ
「香川の実家で身内が亡くなり、その家を相続したが、自分は県外に住んでいて現地に通えない」という方は少なくありません。事故物件かどうかの不安に加えて、遠方で手続きが進められないという二重の負担を抱えていらっしゃると思います。
よしもと空き家相談所は、遠方からの売却相談に対応しています。LINEでの写真査定、IT重説(オンラインでの重要事項説明)、契約書の郵送などで、県外にお住まいのまま手続きを進められます。告知が必要かどうかの整理も、状況をお聞きしたうえで一緒に確認します。詳しくは遠方にお住まいの方の空き家売却をご覧ください。
参考資料・情報確認日
- 「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」(国土交通省・令和3年(2021年)10月策定/宅建業法上の告知義務の解釈指針。自然死は原則告知不要・売買は期間の定めなし/最終確認日:2026年7月26日)
ご相談について
告知が必要か分からない場合は、分かっている事情をお聞かせください。必要に応じて弁護士にも確認しながら、売却の進め方を検討します。
香川・高松の空き家・実家の査定、告知事項の整理についてのご相談は無料です。お問い合わせからどうぞ。LINEでのご相談も受け付けています。
※本記事は2026年8月時点の一般的な情報です。告知の要否や契約不適合責任など個別の法的判断、税務・登記については、必要に応じて弁護士・税理士・司法書士など専門家にご確認ください。






