結論: 事業用定期借地権とは、専ら事業に使う建物(居住用を除く)を所有する目的で、期間を10年以上50年未満と定めて土地を貸す定期借地権です(借地借家法23条)。地主が自分で建物を建てる必要はなく、コンビニやドラッグストア、飲食チェーンなどの事業者が自費で建物を建てて営業し、期間満了で更新なく契約が終わって原則更地で土地が戻るのが基本の形です。契約は公正証書によることが法律上の要件です。地主のメリットは「自己資金ゼロで土地を活かせる」「返還時期が明確」、デメリットは「長期間、用途が固定される」こと。なお、公正証書の作成は公証人、登記は司法書士、税金は税理士の領域です。当所の役割は事業者とのマッチングと条件交渉の仲介で、専門家への橋渡しまで行います。
「郊外に空き地や低利用の土地があるが、自分で店舗やアパートを建てる元手はない」——そんなオーナーにとって、建物を建てずに土地だけを事業者へ貸すという選択肢があります。それを支える代表的な仕組みが事業用定期借地権です。この記事では、高松市を拠点に不動産の売買・賃貸仲介に取り組む宅地建物取引士の視点で、借地借家法23条を条文に沿って正確に整理し、普通借地権・一般定期借地権との違い、地主の損得、そして香川の郊外での活用イメージまで解説します。
事業用定期借地権とは(借地借家法23条)
事業用定期借地権は、借地借家法23条が定める借地権の一類型です。条文では、**「専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く。)の所有を目的」**とし、一定の存続期間を定めて借地権を設定する場合に、契約の更新がなく、建物の築造による期間の延長もなく、期間満了時に借地人が建物の買取りを請求できない(第13条の買取請求をしない)ものとして設定できる、と規定されています。
ポイントは2つです。1つは、貸すのは「土地」だけであること。建物は借りた事業者が自分の費用で建てて所有します。地主は建設費を負担しません。もう1つは、建物の用途が「専ら事業用」に限られ、居住用は除かれること。つまりアパートやマンションなど人が住むための建物は、この23条の事業用定期借地権では建てられません。住宅を想定するなら次に説明する一般定期借地権(22条)の枠組みになります。
期間が満了すると契約は更新されずに終了し、借りた事業者は原則として建物を取り壊して更地にして土地を返す流れになります(※撤去や原状回復の具体的な取り決めは契約で定めます)。ここが、地主にとっての大きな安心材料です。
存続期間と要件——契約は公正証書が必須
事業用定期借地権の存続期間は、23条のなかで2つのタイプに分かれています。
- 23条1項(長期型):存続期間を30年以上50年未満として設定するタイプ。更新なし・建物築造による延長なし・買取請求なしを「定めることができる」形です。
- 23条2項(短期型):存続期間を10年以上30年未満として設定するタイプ。こちらは第3条から第8条まで・第13条・第18条の規定が適用されないため、更新や存続期間の延長といった普通借地権のルールが法律上そもそも働きません。
2つを合わせると、事業用定期借地権として設定できる期間は10年以上50年未満です。コンビニやドラッグストアの出店では10〜20年程度、大型商業施設では20〜30年以上といったように、事業者の投資回収の見通しに合わせて期間が組まれるのが一般的です(具体的な年数は事業者との交渉で決まります)。
そして最も重要な形式要件が、契約は公正証書によってしなければならない(23条3項)という点です。一般定期借地権(22条)が「公正証書による等書面」でよいのに対し、事業用定期借地権は公正証書でなければ効力が生じません。公正証書は公証役場で公証人が作成する公文書で、この作成手続きは公証人の職務領域です。当所が公正証書を作成することはできませんが、契約条件を整理して公証役場での手続きにつなぐところまでをサポートします。

画像はイメージです。
普通借地権・一般定期借地権との違い
土地を貸す借地権にはいくつかの種類があり、混同されがちです。地主にとっての最大の関心事である「更新の有無」と「建物の用途」を軸に、代表的な3つを整理します。
| 項目 | 普通借地権 | 一般定期借地権(22条) | 事業用定期借地権(23条) |
|---|---|---|---|
| 存続期間 | 30年以上(3条) | 50年以上 | 10年以上50年未満 |
| 契約の更新 | あり(更新後は20年→以後10年・4条) | なし | なし |
| 更新拒絶 | 地主に正当事由が必要(6条) | 期間満了で終了 | 期間満了で終了 |
| 建物の用途 | 制限なし | 制限なし(居住用も可) | 専ら事業用に限る(居住用は除く) |
| 契約の方式 | 制限なし | 公正証書等の書面(電磁的記録も可) | 公正証書に限る |
| 期間満了時 | 原則更新・戻りにくい | 原則更地で返還 | 原則更地で返還 |
普通借地権は更新が前提で、地主から契約更新を断るには「自分でその土地を使う強い必要性」などの正当事由(6条)が要ります。正当事由は簡単には認められないため、いったん貸すと想定より長く土地が戻らないリスクがあります。
一般定期借地権(22条)は、存続期間を50年以上として更新なしの特約を付けられる仕組みで、居住用の建物にも使えます。方式は「公正証書による等書面」でよく、電磁的記録による締結も認められています。
**事業用定期借地権(23条)**は、用途が事業用に限られる代わりに、10年以上50年未満という比較的短めの期間から設定でき、更新もないため返還時期を明確にしやすいのが特徴です。ただし前述のとおり公正証書が必須です。(このほか、30年以上経過した時点で建物を地主に譲渡する特約を付ける「建物譲渡特約付借地権」=24条もありますが、本記事では割愛します。)
地主のメリット・デメリット
事業用定期借地権で空き地を貸すことには、はっきりとした利点と注意点の両面があります。
メリット
- 自己資金ゼロで土地を活かせる:建物は事業者が自費で建てるため、地主は建設費や借入れのリスクを負いません。アパート経営のように空室リスクを抱えることもありません。
- 返還時期が明確:更新がないため、契約時点で「いつ土地が戻るか」がはっきりします。将来、自分や子世代で土地を使いたい・売りたいという計画とも合わせやすい形です。
- 原則更地で戻る:期間満了時には原則として建物が撤去され、更地で返還されます(撤去や原状回復の範囲は契約で取り決めます)。
- 持ち続けながら収益化できる:売却と違って所有権は手放さないため、土地はオーナーのものであり続けます。
デメリット・注意点
- 長期間、用途が固定される:10年から最長50年近くにわたって土地の使い道が事業者に固定されます。途中で「やっぱり自分で使いたい」と思っても、期間中は原則として戻せません。
- 中途解約や事業者の撤退リスク:契約や社会情勢によっては、事業者が期間途中で撤退する可能性もあります。中途解約の条件や違約の取り決めは契約で慎重に設計する必要があります。
- 地代の水準は個別性が高い:借地の地代は立地・面積・事業者の業態によって大きく変わり、公表された統計も乏しいため、近隣事例をもとに個別に検討することになります(本記事では特定の相場額は示しません)。
- 税務の扱いは専門家に確認を:借地権の設定に伴う権利金や地代の税務上の扱い、相続時の評価などは税理士の領域です。当所では判断材料の整理と専門家への橋渡しを行います。
売却して土地そのものを手放すか、貸して所有し続けるかは、それぞれに向き・不向きがあります。更地にして売る選択肢と迷っている場合は、古家付き土地のまま売る?解体して更地で売る?もあわせてご覧ください。
香川の郊外・ロードサイドでの活用イメージ
事業用定期借地権が使われやすいのは、幹線道路沿い(ロードサイド)のまとまった土地です。香川県内でも、国道や主要県道沿いには、コンビニエンスストア・ドラッグストア・ホームセンター・飲食チェーン・カー用品店・コインランドリーといった駐車場を広くとる業態の出店ニーズが見られます。こうした業態は、土地を買い取るより「定期借地で借りて建物だけ自社で建てる」ほうが初期投資を抑えられるため、事業用定期借地権と相性が良い傾向があります。
香川では車社会を背景に「駐車場を十分に確保できるか」が出店可否を大きく左右します。店前に台数を停められるだけの間口・奥行きがあるか、幹線道路からの出入りがしやすいかといった条件が、事業者が土地を評価するうえで重視されやすいポイントです。逆に言えば、いま何にも使えていない郊外の空き地でも、間口の広さや通行量次第で事業者の候補地になり得るということです。
もっとも、どの土地にどんな需要があるかは、立地・面積・接道・周辺の競合状況をひとつずつ見なければ判断できません。「うちの土地は事業者に貸せるだろうか」という問いは、現地と条件を確認するところから始まります。(賃料や需要の見通しの立て方は、店舗の賃貸の考え方をまとめた空き店舗を貸したい人が最初に読む記事も参考になります。)

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当所の関わり方——マッチングと条件交渉の仲介
事業用定期借地権を検討するとき、地主が自分だけで事業者を探し、条件を詰め、契約手続きまで進めるのは簡単ではありません。ここで宅地建物取引士が入る意味があります。
よしもと空き家相談所の役割は、土地を貸したい地主と、出店したい事業者とのマッチング、そして地代・期間・原状回復の範囲などの条件交渉の仲介です。具体的には、次のような流れで進みます。
- 現地・条件の確認:土地の所在・面積・接道・用途地域などを確認し、事業用定期借地に向くかどうかの方向性を整理します。
- 事業者へのアプローチ:出店ニーズのある事業者や、事業用地を探すネットワークへ土地情報を提案します。
- 条件交渉の仲介:期間・地代・中途解約の扱い・期間満了時の建物撤去(更地返還)など、双方の条件をすり合わせます。
- 専門家への橋渡し:契約が固まったら、公正証書の作成は公証人、借地権の登記は司法書士、税務は税理士へおつなぎします。
つまり当所は「探す・交渉する・つなぐ」までを担い、公正証書の作成・登記・税務相談そのものを当所が行うことはありません。これらは資格をもつ専門家の独占業務だからです。地主が安心して判断できるよう、材料を揃えて適切な専門家に橋渡しするのが仲介会社の仕事です。
事業用物件・事業用地の活用サービスの全体像は空き店舗・事業用地活用のご案内にまとめています。
県外にお住まいの方へ
「香川に相続した土地や実家の跡地があるが、自分は県外に住んでいて現地の対応ができない」というオーナーは少なくありません。
事業用定期借地の検討でも、現地の確認・写真の共有・事業者との条件交渉といった現地対応は、すべて当所が代行します。オーナー様には、資料の確認と必要な判断、書類への署名・捺印だけをお願いする形で、来県ゼロで話を進めることができます。公証役場での手続きが必要な場面でも、進め方を整理してご案内します。
県外から香川の土地を活用・整理する方法の全体像は、来県ゼロで香川の実家を売却・活用する方法にまとめています。
まとめ
- 事業用定期借地権(借地借家法23条)は、専ら事業用の建物(居住用を除く)を所有する目的で、期間10年以上50年未満で土地を貸す定期借地権
- 契約は公正証書によることが必須(23条3項)。一般定期借地権(22条)の「書面でよい」より要件が厳しい
- 地主のメリットは自己資金ゼロ・返還時期が明確・原則更地で戻る。デメリットは長期間の用途固定と中途撤退リスク
- 普通借地権は更新があり正当事由が必要な点で、返還のしやすさが大きく異なる
- 香川では幹線道路沿い・駐車場を確保できる土地が事業者の候補地になりやすい傾向
- 地代の相場や税務は個別性が高く、近隣事例と専門家の確認が前提
参考資料・情報確認日
- 借地借家法(e-Gov法令検索) — 第3条(存続期間)・第4条(更新後の期間)・第6条(正当事由)・第22条(一般定期借地権)・第23条(事業用定期借地権等)・第24条(建物譲渡特約付借地権)。2026年8月20日確認
「うちの郊外の土地は、事業者に貸せるだろうか」——その答えは、現地と条件を確認するところから始まります。売却するか、貸して持ち続けるか、選択肢を並べて比較するご相談も歓迎です。査定・ご相談は無料です。お問い合わせページ、またはLINEからお気軽にどうぞ。県外にお住まいの方も、写真とLINEのやり取りだけで話を進められます。
※本記事は2026年8月時点の借地借家法(e-Gov法令検索)に基づく一般的な解説です。個別の契約・税務・登記の取り扱いは、それぞれ公証人・司法書士・税理士など専門家にご確認ください。





